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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
何うして、こう、気短かになったのか――それにしても、小太郎の技量は、一流の達人だ。わしも、不用意であったが、義観へ、斬り込んだ時に、臂を打った早業は、人間業ではなかった)
月丸は、草の中、木の中を歩みながら、八郎太を埋めてある墓の方へ近づきつつ
(真知の働く時は、思わざるに勝つ、と、あの坊主は、小太郎に説いていたが――)
そう考えてくると、心が、落ちついてくるし、小太郎に対して、説いていた義観の言葉が、頭の中へ明るく、微笑して、浮んできた。だが
「馬鹿らしい」
と、呟いた。
「糞坊主、坊主の分際で、隼人に剣を説き――小太郎め、説かれて、恐れ入って、何んたるざまだ」
月丸は、憑かれた人のように、独り言を云いつつ、くるりと、堂の方を、振向いた。もう、縁側には誰も居なかった。月丸は、大きい溜息をした。そして、暫く、じっと、凝視めていたが、振返って、踏み出そうとして、さっと、顔色を変えた。
今まで、前方を、眺めながら、歩いて来たのに、少しも、眼に入らなかった墓が、はっきりと、眼についたのであった。そして、それが、眼に入ると同時に、月丸は、何かしら、脚下から、寒いものが、背骨を伝って、全身を掠めて行ったような気がした。