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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

移り行く

「何んじゃ」

「家の重大事に就き、夜中を憚らず、参りました」

「わしの隠居のことか」

「左様」

「わしは、隠居をしてもええ――隠居をしたい。然し、隠居をすれば、家のつぶれることは、眼に見えている。隠居をせんでも、家は、そう濫りにつぶせるものではない」

「幾度も、聞いております。兄上の政策が、多大の金子を費し、折角、父上なり、笑左なりの立直したる藩財を、又、空しくするであろうとの御懸念で、ござりましょう」

「それのみではない。不逞の浪士輩に、担ぎ上げられて、倒幕の、攘夷のと、大外れた事をしでかすかも知れぬ。それに、斉彬の代となれば、わしが、今度国許で処分した奴等の余類を取り立てて、上席の者を、悉く、処分するかもしれぬ。そうなると、いよいよ、島津の内訌は、天下に知れ渡って、これがためのみでも、転封されるかも知れん。それよりも、今暫く――機をみて、お前に、譲ろうと思うが――」

久光は、父の顔を、鋭く見て

「要りませぬ」

と、頭を振った。

「要らんなら、要らんでよい」

「父上は、茶壺と、十徳とを、二度拝領なされました」

「うむ、隠居せい、との謎じゃ。二度も、謎をかけられたのは、三百諸侯、三百年間、わし一人じゃ。