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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
「そうだ」
「薩州も、斉彬も、益満も、判らん」
「そういうものは判らんでもよい。吾等期するところは尊王攘夷」
「そうだ、前途程遠し、思いを禁裏勤王に馳せ、か」
「叱っ、隣りへ聞える」
と、一人が制した。一人が
「寝たらしい」
「貴島、二階へ、運んでやれ」
「女の沙汰かっ」
と、貴島が、鋭く云った。
牧仲太郎が、手を叩いた。
「はい」
次の間で、返事があった。
「山内を――」
「山内様は、先刻、お出ましになりましたまま、未だお戻りになりませぬ」
京都下河原、二階堂志津馬の寮の、一部屋であった。狭い庭であるが、鞍馬石に、木竹を配して、巧妙に布置されてあった。牧は
(山内も、家中の、尊王熱に浮されて、京の街を、歩いているのであろう)
と、思った。
(あれは、自分の腕を、人に、己に、見せたくてかなわぬらしいが)
牧が、そう思って、扇を使っているところへ
「御免」
と、廊下で、声がして
「お一人かの」
と、部屋の中を覗き込みながら、京都藩邸の用人が、入って来た。江阪という六十近い老人であった。女が、すぐ、小走りに、蒲団を持って来た。
「京都は、暑いて」
と、呟いて、額を拭いて、老人は、縁側へ、座蒲団を持って行った。