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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
牧は、だんだん、うつむいて行った。膝の上へ涙が落ちた。玄白斎も、涙をためていた。
牧の一行が立去ってからも、玄白斎は動かなかった。連日の疲れが一度に出て来たせいもあったが、玄白斎にとっては、それよりも、牧の処分に対して、強い態度を取れなかったという苦しさからであった。
玄白斎の日頃からいって、もっと、烈しく叱るであろうと、和田も、高木も考えていたが、玄白斎は、牧に逢い、牧の辛苦を見ると、唯一人の自分の後継者を、自分の手で失いたくはなかった。和田の、高木の前もあったが、何うしても
「自裁しろ」
とは、云えなかった。和田も、高木も、黙っていた。二人が黙っているだけに、玄白斎は、自分の矛盾した心に、悩まなければならなかった。
「脚でも、お揉み致しましょうか」
仁十郎が、こう云った時
「爺っ――牧の一行が、通らなんだか」
と、表で、大声がした。そして、大勢の足音が土に響いて来た。
「はい、今しがた、お越しになりました」
爺が、台所から、表へ小走りに出て行きながら
「どうぞおかけ下さいませ」
和田が、襖のところから、眼を出すと、鉢巻をしめ、裾を端折った若者が、八人ばかり、軒下に立って、何か囁き合っていた。