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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

(これが、父を殺し、一家を離散させた奴の最期か)

小太郎は、牧の首を斬り、止めを刺し、蹴倒し、踏み躙って――と、思っていたが、ここに倒れている牧仲太郎は、漂泊の末に死んで行く、老人の残骸と同じ形であった。

(この男を斬るために、二年近く、様々の苦労をして――)

と、思うと、仇敵とも、敵とも、感じようのない、みじめな牧の骸の前に立って、何んのために――何うして、ああまで一家が、苦労したのか、判らなくなってしまった。

(これが、わしの、一生の目当としていた仇討か――これが――)

小太郎は、夕陽の当っている牧の骸を、じっと見たが、そこには、大きい空虚があるだけで、何んの憎さも、何んの怨みも、感じることができなかった。

(せめて、一太刀でも、合せたなら――)

小太郎は、父が、物足りなく感じているであろうと思い、母が、何故もっと早く斬らなかったと、怨んでいるように思ったが

(そうだ、叡山でのあの時に――牧は、わしを救ってくれた――それは、父も知っていよう――牧は、悪人ではない、兵道家として、道を踏外しただけだ――悪人でない。決してない。わしが牧なら、矢張りこうなったかもしれぬ)