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だいぼさつとうげ
大菩薩峠13
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠13(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 349,705 字 · 678 頁
お蘭はようよう駕籠を這い出して来ました。そうして、自分のしどけない姿を顧みる暇もなく、今まで声のみに応対していた相手の人の姿を、のしかかっている駕籠の上で認めました。
それを認めたのは、つまり、完全に保留されていた駕籠提灯の蝋燭の余光で、闇のうちにうっすりと描き出されていたその輪郭に接すると、何とはなしに身の毛がよだつ思いがしました。
というのは、別段に異形異装の目を驚かすものがあったというわけではなく、貪淫惨忍なる形相を予想したのが、目のあたり的中したことに仰天したようなわけでもなく、その男が冷々淡々として自分の駕籠にのしかかって、中にいた、まだ見ず知らずであるべきはずの自分というものに向って話しかけている形勢が、ちょうど十年も馴染の女郎の膝にもたれながら、熟しきった痴話に燃えさしの炎の花を咲かせているようなふうで、ちっとも動揺したところはなく、まして今の先、飛騨の郡代の首を水を掻くように打ち落して、それを塵芥を捨てるように、わざわざ中橋の真中へ持って行って置いて来たほどの当人と思うわけにはゆかなかったからです。
のみならず、自分がようやく駕籠を抜け出して来てみても、その冷々たる面はいよいよ冷々たるもので、特に自分が抜け出して来たものだから、眼を据えて見ようとも、見直そうとも心構えを直したのではない