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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新編忠臣蔵(しんぺんちゅうしんぐら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 頁

青空文庫

菅笠の白さに、一学は堤で会ったあの糸屋が忘れ物を取りに来たな――と頷いていた。

門の外から、菅笠は中を覗いている。やはり旅商人ではあるが、先刻の男とは違っていた。道中差を一本落し、背が短くて、眼が鋭い。

『おっ、此家か』

と、その男は、一学の姿を見かけて大胯に入って来た。ちょっと彼も見違えていたのである。

『なんだ、木村丈八か』

『何を驚いているのだ』

『その姿は?』

『これか』

と、丈八は自分の木綿縞の着物に、眼を落して、

『――ちと仔細があって』

『無論、仔細はあるのだろうが、突然では貴公とも見えぬ』

『見えては困る。――兎に角、汗を拭きたい、井戸は何処か』

『あれだ』

指さすと、木村丈八は、縁先の草履一足片手にさげて、

『ついでに足を洗って来る』

笠や振分をそこに置いて、庭の隅にある石井戸のほうへ歩いて行った。

裏の田から田植歌がながれてくる。老母は糸屑を袂にたからせて、暗い茶の間で湯を沸かしにかかった。車井戸の釣瓶が元気よく幾たびも庭の隅できりきりと鳴る。

一足ちがいに、先刻の糸売りの旅商人がひょっこり入って来た。そこに、堤で会った一学がいたので、糸屋はちょっと意外な顔をしたが、小腰をかがめて、