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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新編忠臣蔵(しんぺんちゅうしんぐら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 頁

青空文庫

亡き殿も、平常は御謹厳であったが、御酒でもくださるとなれば、若侍には、お咎めなく何事もゆるされた。きょうは、御酒をいただこう』

『あれ見なさい。そんな事を云うと、後の若い連中が、手具脛ひくように欣んでおる』

『それが、供養じゃ』

『御老人』

田中貞四郎が後から、

『――で、勘定の段はどうなりますか』

『頭割りじゃよ』

『はははは。老人の御施主でないので』

『浪人すると、細こうなる』

誰が眺めてもこの人々が、逆境の者とは見えなかった。なおさらのこと、仇討などを考えているとは微塵見えない。磊落に身を落して、明日は明日の風としているように、泉岳寺の僧侶たちにも眺められた。

そして山門を出てゆくと、彼方からただ一人で、弓のような腰には似合わない朱鞘の大きな刀を横たえて、せかせかと、息を喘って来る老武士があった。

『おう、無人殿だ』

皆、視線を送る。

もう七十に近い年頃。総髪にして野袴に草色の革足袋をはき、汗をこすりこすり近づいてくる。浪宅は本所中之郷という事だから、そこからここまでは近い道程ではない。かくしゃくとしているのだ。内蔵助には遠縁にあたる者で、大石無人という人物なのである。