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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新編忠臣蔵(しんぺんちゅうしんぐら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 頁

青空文庫

『これ限りでございます。もいちど、最後にお諫めいたして参ります。どうぞわが子が可愛いと思召したら、御思案をお決めくださいませ』

『ば! ばかをいえ!』

『どうあっても、お覚悟はなりませぬか』

『死んで、堪るか。わしが、自決する筋がどこにあるか』

『理を責めるのではございませぬ。情にお訴え申すのでございます』

『情に? ……。これっ、自分の良人に向って、自決をすすめる妻が、情にとは何うして云える』

『子の為には、云えまする。万が一にも、赤穂の浪人共のために、不慮の刃でも酬われたなら、左兵衛佐は、何うなりましょうか。吉良家は、安泰に続きましょうか。又、米沢の当主にも、悪うすれば、累がかからぬとは限りませぬ。今では、養子に遣わして、他藩の太守となっていますが、あの弾正大弼様も、血においては、私たち夫婦の実の子ではございませぬか。吉良家といい、上杉家といい、あなた様のお心一つでは、潰れるかも知れませぬ、助かるかも分りませぬ』

『……もういい、繰言は止せ』

『いいえ、これ限りです。申すだけ申します。世上の喧しい取沙汰を、妻なればこそ、聞いてはおられませぬ。口汚い誹りを浴び、起臥にも、風の音にも、心を脅かされながら、短い老先を生きのびたとて、それが、何の余生の楽しみとなりましょう。