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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新編忠臣蔵(しんぺんちゅうしんぐら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 頁
嘘か、真実か、いずれを問うも、いずれも人々の解し方次第としておく――、まずその辺が、世のおもしろさと云うものであろう。また、自分を首領と恃んで、生命の始末を目標に求めようとする同志たちにも、もっとも死によい所でもあるだろう。
思えば、こんどの事件ほど、偶然が、すべて劇的な要素をもっているものはない。――花の三月、場所は、柳営ノ松の間の廊下という曠れの舞台で、しかも、扮装は、大紋烏帽子という古典的な装いの下に、殿は上野介へ、あの刃傷に及ばれた。大きく観じれば、それそのままが、生々しい社会事件というよりは、宛として、一場の演劇の開幕ではあるまいか。
どういう生れ合せやら、自分たちは、この生きた演劇の舞台に、いやでも登場させられている。それぞれが、ワキなり、シテなり、一俳優ほどな運命の演出を使命されているようにすら考えられる。思うに、これは、凡事ではない。
何か、宇宙に心のあるものがあって、地上の選ばれた人間たちへ、この演技を、命じているのではあるまいか。
人間は畜生以下のものではない。――それを演出しておけと、地上無数の、お犬様以下におかれている人間たちを観衆として、いやおうなく、天意に依る筋書を与えられて、その幾幕目かに、露命をこうして今日に、演じつづけている自分ではなかろうか。