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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新編忠臣蔵(しんぺんちゅうしんぐら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 頁
夫人の顔は、象牙のように、白くなった。
『して、相手方は、どなたですか』
『まだ、その辺までは』
『殿様の御生死は、何うでござりますか』
『つい、聞き洩らしました。――老中のお召で、慌てて行ってみると、右の次第。屋敷の者一統へ、心得違いのないようにというお諭しを受けて、駈けつけたものですから』
澄み切って、涙もうかべない夫人の眼差が、きりっと、少し腹立たしげにうごいた。
『弟御様のおん身として、お兄上が、大事の場合、いかに慌てておいで遊ばしたとはいえ、相手方の名も、御生死も、お質しなく、唯、家中取鎮めのお申し渡しだけを受けて、お立ち帰りなされるとは、何としたことでございますか』
『……そうでした。……気がつかない事をいたしました』
『口惜しゅう思いまする。浅野の御一門には、主にも家来にも、左様な不覚な方は、居らっしゃらない筈でございますのに』
『申しわけありません』
赤面して、うろうろと、表方へ立ったり、奥へ来て、坐っていたりしているうちに、供方一同が、ひっそりと帰ってくる。
すぐその後へ、お目付天野伝四郎、近藤平八郎が、使者として来る。水野監物が見える。又、親族の戸田采女正や浅野美濃守などが駈けつける。