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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁
広巳は上唇をちょっと顫わすようにした。それは広巳の笑う時の表情であるが笑いにはならなかった。
「まあ、いいさ」
お町の眼はその時広巳の右の袖口へ往った。
「まあ、袖口が綻びているじゃありませんか」
袖口の綻びているのは争闘か、それとも長い煙管で巻きつけられたがための綻びか。
「品川ですね」
広巳はまた上唇を顫わしたばかりで何も云わなかった。
「そうでしょう、きっと」
広巳はお町のほうへくるりと背を向けて縁側へ腰をかけた。
「まあ、いい」
「御飯はどうなさいました」
「喫えるのか」
「おすみになっておりませんか、すぐ出来ますよ」
「それじゃ喫おう」
「もすこしお待ちになると温い御飯も、お菜もできますが」
「お菜はどうでもいい」
「それでは、すぐめしあがりますか」
「うん」
「それでは」
お町はもう起っていた。お町は一方の戸棚を啓けて準備にかかった。広巳はそのままぼんやりとしていた。
「上へおあがりになっては」
膳の準備はもう出来てお町は長火鉢の鉄瓶を見ていた。
「いい、ここで」
「それでは」お町は膳を持って広巳の右側へ往った。「薩摩あげと、佃煮しかありませんが」
「いい」
広巳は体を斜にした。