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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁

青空文庫

長吉は黙って掌で燠の見当をつけて煙草を点けた。お杉の顔は嘲りでいっぱいになっていた。お杉は次の室へ顔をやった。

「お鶴、聞いたかい」

晴れた外気を映した明るい室には、メリンスの長襦袢になった娘のお鶴が、前方向きになって鏡台に向って髪を掻いていた。母親似の額の出た赧ら顔が鏡に映っていた。

「なにをよ」

「なにって、家の旦那さまが、家の細君の往く前ぐらい、聞いたっていいじゃないかとおっしゃるのだよ」

「そう、心配になるでしょうよ」

「なに、毎日細君に稼がして、家で無駄飯を喫ってはすまないから、かわりにでも往ってくれるだろうよ」

「それじゃ、往ってもらったらいいじゃないの、とんとん走って往くでしょうよ」

「往ってもらおうかね、家には、皆りっぱな男が揃ってるから、何かの時にゃたのもしいよ」

「そうねえ、矜羯羅のように走る男もあれば、千里眼の人もあるし、何かのばあいは、心丈夫だよ」

「稼ぎは出来るしね、わたしも安心だよ」

かちりと煙管をすてる音がした。

「おい」

長吉の声は一段と小さくなった。お杉は長吉のいることを忘れていた。

「なんだね」

「まあさ」

「まあさがどうしたと云うのだね」