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しゅんでい
春泥・三の酉
久保田 万太郎
線上閱讀久保田 万太郎《春泥・三の酉(しゅんでい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 86,075 字 · 173 頁
五
五
そのあと、田代は、借りて来た「菊の家」の番傘をさして、一人とぼ/\公園のなかへまた入って行った。――代地の明治病院のそばまで帰るんだから、ほんとうなら一しょに小倉と、蔵前ゆきのその電車に乗るのがあたりまえだった。が、そうしなかったのは、四日ぶりで逢うかの女のために、かの女の好きな名所焼のみやげを仲見世で買う必要があったからだった。――で、公園へ入ると、かれは池のふちを真っ直に仁王門のほうへあるいた。――とッぷりもう暮れ切ったなかに、ふみしだかれた雪みちの、一トすじほそ/″\とつゞいているのと、両側の木立の、暗い梢をしずれて落ちる雪の音とがむやみにかれを寂しくさせた。
で、名所焼を買うと、今度はかれは一刻も早くうちへ帰りつきたくなった。雷門を出るとすぐ茅町までかれは円タクに乗った。
が、そうはいっても、やがてわが家のまえに立ったとき、今更のようにかれは閾の高いのを感じた。なぜなら降るからそうしたに違いない片戸ざし。……格子に半分雨戸を入れた門口のさまが、そう思ってみるせいか、主人のいないうちの寂しさをはッきりかれに感じさせた。――長い旅からでも帰って来たときのような心弱さが急にかれの胸もとにこみ上げた。