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しゅんでい
春泥・三の酉
久保田 万太郎
線上閱讀久保田 万太郎《春泥・三の酉(しゅんでい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 86,075 字 · 173 頁
かれは手拭を下げて外へ出た。あらためてその真っ青に……青く冷めたく水のようにそういっても美しく晴れた空をみ上げた。……と一しょに、かれは、いつの間にかそのあたりの、眼に触れるすべてのものゝいそがしくすでに年の暮の粧いをしているのに気がついた。――おもいなしか往来をあるいている人たちでも浮足立って感じられた。――大通りにはすでに春を待つ笹の影さえつゞいていた。
「お湯ですか、先生?」
うしろからかれは声をかけられた。
「えゝ?」
ふり向くとそこに、近所の鰻屋の、芝居の好きな出前持が立っていた。
「おう、金公……」かれは愛想よく「どうだ、いそがしいか?」
「だめですよ、もう、こゝへ来ちゃァ。」
「だめだ? ――生意気いっていやァがる。」
「生意気じゃァありません、ほんとうですよ。」
「そうだ、ちょうど好かった。」ふいとかれは思いついたように「あんまり荒くないところを三人前に、どんぶりを一つ、あとで家へとゞけてくれ。」
「荒くないところを三人前にどんぶりを一つ?」
「そうだ。」
「かしこまりました。」
出前持にわかれて間もなくかれは湯屋のまえに立った。
「『今日柚湯』――そうか、今日は冬至か?」