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やそうざっき・やちょうざっき

野草雑記・野鳥雑記

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《野草雑記・野鳥雑記(やそうざっき・やちょうざっき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,016 字 · 284 頁

青空文庫

単なる模倣を以て、何人からともなくかように無意味なる前代の斃鼠処理法を、多数の東京人は学んでいたのである。この方法たるや、かつて帝都の青空の中に、無数の鳶が輪を描いていた時代の遺物である。三馬の『浮世風呂』がもてはやされた世の中には、江戸はまだ一本の電線もなかった故に、京橋の鳶は能く小僧の揚豆腐さえも、さらって行くことがあったのである。今日ではいかに勇敢なる昼鳶でも、またいかにうまそうな無毒の鼠が落ちていても、この無数の針金の間をくぐって、これを拾いに町に降るやつがあろうか。それを一考して見ずに、鼠は町へ捨てるものだと今以て心得ている。実に驚き入った伝統主義ではないか。

第一にちょっと周囲を見まわしても鳶など一羽も鳴いていないでないか。広重の世を過ぎてなお三四十年の間は、京橋・築地辺の河岸近くにも、材木屋があり竹屋があり、その材木のてっぺんなどには、鳶が羽を休め目を光らしていた。下品な鳶だと人が軽蔑していたのは、形ばかり鷹のように堂々としていながら、腐ったきたない食物をも念掛けて、齷齪としてこれを拾ってあるくためであった。今となってはその好意は尊いものに感ぜられる。