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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,866 字 · 318 頁

青空文庫

五

一万二千石の大名が、たった一と目で所望したのも、奥方が必死の嫉妬陣を布いたのも、決して無理ではありません。

「銭形の親分さん、妹がとんだことをお願い申したそうで――」

唯のやくざ、源太郎の娘に返って、へり下った態度も、妙に人を悲しませます。

源太郎の家族というのは、これが全部でした。

「他には」

「子供達がおりますが、十一から下で、三人ともまだ夜中ですよ」

捨吉はとりなし顔にこう言います。

「お前さんの?」

「いえ、とんでもない」

莞爾とするとまた片靨の寄る捨吉、極り悪そうに手を振って見せるのは、子供はみんな源助のだ――という意味でしょう。それにしても、この男の美しさも尋常ではありません。

五

平次は一通りみんなの言い分を聞きました。が、小堀家からの使者として、側用人桑原伊織が持って来た、立派な菓子を喰べさせると、若様の十次郎は、その晩さんざんに苦しんで、翌る日も待たずに死んだ――と言う以外には何の手掛りもありません。

たった三つになったばかりの十次郎は、一と晩の苦悩に骨と皮になって、死体には凄まじい紫斑が一杯であったというのですから、毒殺されたことは、まず、疑いもないことでしょう。