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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十四)雛の別れ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 114,139 字 · 233 頁

青空文庫

「田町四丁目、辻番の手前で、――あすこの大福は大きくてうまい」

「馬鹿だなア。――それから変な野郎が喧嘩を吹っかけたのは東禅寺前」

「高輪中町で、――あの辺には洒落た掛け茶屋がある」

「そこで長いあいだ揉み合ったのか」

「なアに、ほんの煙草一服の間でさ。――ポンポンポンといきなり四つ五つ引っ叩いて、引っ組んで転がって――」

ガラッ八は仕方話になりました。

「起き上がって見ると駕籠がいなかったんだね。それとも暗くて見えなかったのか」

「あの辺は海沿いの一本道でさ。日が暮れたって、一丁や半丁の見透しがききますよ」

「横道へ入ったのかな」

「そんなことかも知れません。――とにかく、向うから来る駕籠はあったが、こっちから行くのは一つもなかったんで――」

「ちょいと待ってくれ。その向うから来る駕籠というのは、東禅寺前で逢ったのか」

「さんざん揉み合った野郎が逃げたんで、立ち上がって改めて駕籠を追っかけると、ちょうど品川の方から逆に町駕籠が一梃飛んで来ましたよ」

「馬鹿野郎ッ」

「ヘエ――」

不意の馬鹿野郎を喰らって、ガラッ八はキョトンとしました。叱られる意味が分らなかったのです。