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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁
「おれもすッかり忘れていた。ところが、今ひょいと欄間を見たら、金網の蔭に動いていやがったので引き摺り降ろしたのだが……野郎、逃げだす隙を狙っていたに違いない」
「面倒くせえし、逃げられでもした日には藪蛇だから、早く片を付けちまっちゃどうだ」
「うん、それじゃ一つ庭先で、丹石流の据物斬りを見せてやろうか。おい、手を貸せ!」
寄ってたかって、腕や襟がみを引っつかみ、ズルズルと万吉を庭へ曳出した。椎の大木、その根へ荒縄で縛りつけ、三次が棒切れでピシピシと撲りつける。
「さ、ぬかせ、てめえはお十夜の兄貴へむかって、只一人で御用呼ばわりしたくらいだから、この荷抜屋仲間を嗅ぎつけていたに違いねえ。奉行所でも知ってるのだろう、なに、知らねえことがあるものか。さッ、てめえの相棒は誰と誰か、手入れをする諜し合せもあったろう! 野郎! いわねえとこうだぞ!」ピシリッ、ピシリッと皮肉を破る鞭の苦痛を万吉じっとこらえている。しかしその苦痛よりは、最後の一秒間まで、何とか助かる工夫はないかと悶えた。ここで自分が助からねば、せっかく握った大事件の曙光、再び無明に帰して、常木先生も俵様も終生社会の侮蔑に包まれて、不遇の闇に生涯を送らなければなるまい。