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さんごくし

三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 頁

青空文庫

と、強いて眸をみはった。

すると、はるか先に、何も知らず駆けていた前隊が、急に、雪崩を打って、戻ってきた。

強力な敵の潜行部隊が、早くも先へ迂回して、道を遮断し、これへ来るというのである。

まだ充分意識もつかない父を、ふたたび馬の背に乗せて、長男袁譚が抱きかかえ、それから数十里を横道へ、逃げに逃げた。

「……だめだ。苦しい。……おろしてくれい」

袁譚の膝で、袁紹のかすかな声がした。いつか白い黄昏の月がある。兄弟と将士は、森の木陰に真黒に寄り合った。

草の上に、戦袍を敷き、袁紹は仰向けに寝かされた。――にぶい眸に、夕日が映っている。

「袁尚。袁譚も……袁煕もおるか。わしの天命も、尽きたらしい。そちたち兄弟は、本国に還り、兵をととのえて、ふたたび、曹操と雌雄を決せよ。……ち、ちかって、父の怨みを散ぜよ。いいか、兄弟ども」

云い終ると、かっと、黒血を吐いて、四肢を突張った。最後の躍動であった。

兄弟は号泣しながら、遺骸を馬の背に奉じて、なお本国へ急いだ。そして冀州城へ入ると、袁紹は陣中に病んで還ったと触れ、三男袁尚が、仮に執政となり、審配その他の重臣がそれを扶けた。