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さんごくし

三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 頁

青空文庫

しかもこの事たるや、容易ならぬ問題でもあるし、一朝一夕に孔明が承諾しようとも考えられないので、衷情を面にあらわして、なお縷々その間の経緯やら自己の意見をも併せのべた。

すると、終始、半眼に睫毛をふさいで、静かに聞いていた孔明は、語気勃然と起って、

「徐兄。――ご辺はこの孔明を、祭の犠牲に供えようというおつもりか」

そう云い捨てるやいな、袖を払って、奥の室へかくれてしまった。

徐庶は、はっと、色を変じた。

祭りの犠牲――

思い当ることがある。

むかし、某君が、荘子を召抱えたいと思って、使者をさしむけたところ、荘子は、その使いに答えていったという。

(子よ、犠牲になる牛を見ずや。首に錦鈴を飾り、美食を飼わしているが、曳いて大廟の祭壇に供えられるときは、血をしぼられ、骨を解かれるではないか)

徐庶は、孔明のことばに、慚愧した。もとより畏敬する友を牛として売る気などは、毛頭もないが、折角の交友に、ふと、気まずいものを醸しただけでも、すくなからず後悔させられた。

「いつか詫びる日もあろう」

彼はぜひなく席を去った。外に出て見れば、黄昏の空に落葉飄々と舞って、はや冬近いことを想わせる。