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さんごくし

三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 頁

青空文庫

自分は、漢の左将軍、宜城亭侯、領は予州の牧、新野皇叔劉備、字は玄徳というもの。先生にまみえんため、みずからこれへ参ったのであるが」

「待っておくれ」

童子は、ふいにさえぎって云った。

「――そんな長い名は、おぼえきれやしない。もう一度いってください」

「なるほど。これはわしが悪かった。ただ、新野の劉備が来ました――と、そう伝えてくれればよい」

「おあいにくさま。先生は今朝早天に出たまま、まだ帰っておりません」

「いずこへお出でなされたか」

「どこへお出かけやら、ちっとも分りません。――行雲踪蹟不定――で」

「いつ頃、お帰りであろうか」

「さあ。時によると三、五日。あるいは十数日。これもはかり難しですね」

「…………」

玄徳は、落胆して、いかにも力を失ったように、惆悵久しゅうして、なおたたずんでいたが、そう聞くと、そばから張飛が、

「いないものは仕方がない。早々帰ろうじゃありませんか」といった。

関羽も共に、

「また他日、使いでも立てて、在否を訊かせた上、改めてお越しあってはいかがです」

と、駒を寄せてうながした。

孔明の帰ってくるまでは、そこにたたずんででもいたいような玄徳であったが、是非なく、童子に言伝てを頼んで悄然、岡の道を降りて行った。