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さんごくし

三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 頁

青空文庫

幅のある背を向けて、老人と対しているのは、白皙黒鬢の壮士で、親子か友人か、よほど親しい仲らしい。

玄徳は慇懃に、酒興を醒ました無礼をわびて、

「それに在すは、臥龍先生とはちがいますか」と、老人へ向って云った。

「ちがう……」

老人は顔を振って苦笑する。

玄徳はさらに、若いほうの人物にむかって、

「もしや孔明先生は、其許ではありませんか」と、訊いてみた。

「ちがいます」と、若いほうも、明晰に否定する。

老人はいぶかしげに、次に自分のほうから訊ねた。

「かかる雪中、臥龍をおたずねあるは、そも、何事ですか。また将軍こそ、如何なるお人か?」

「申しおくれた。自分は漢の左将軍、予州の牧、劉玄徳というもの。――孔明先生を訪うわけは、乱世の現状を治め、済民の道を問わんがためです」

「えっ、では新野のご城主ではありませんか」

「そうです。今、戸外を通るに、旺な声をして、慷慨の歌を吟ずる声がしました。察するに必ず先生ならんと――われを忘れてこれへはいって来たわけですが」

「それはどうも」

二人は、顔を見合わせて、

「折角でしたが、われわれはいずれも、孔明ではありません。ただ臥龍の友だちどもです。