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あかくら

中谷宇吉郎集 第一巻

中谷 宇吉郎

線上閱讀中谷 宇吉郎《中谷宇吉郎集 第一巻(あかくら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 107,056 字 · 223 頁

青空文庫

北国の永い冬は鼠色の雪に包まれて、人々の外界との交渉を全部絶ってしまう。勿論その頃には、電灯はなくて、雪洞のような形の脊の高い洋灯が二つ、御前様の手許と人々の間とに立っている。私はよほど御前様の御気に入っていたものとみえて、私が上って行くと、御前様はいつも火燵を抜けて、その炉の隅まで出てこられる。そして毎日その日の学校の話などを聞かれた。学校で教わることや、どの町で雪下しをしていたなどというような話さえ、あるいは外界の消息を御殿へ伝えることになっていたのかも知れない。

御殿の生活の中で、今になって一番懐しく思い出されるのは、その生活が極めて質素だったことである。冬の夜などで少し晩くなると、御茶が出て、ほとんど決ってかき餅と酒の糟とが御馳走された。酒の糟は薄い板のように圧し固められたもので、これをかき餅と一緒に御居間の炉の上で焼きながら、次から次へと話が続いた。そのような時には、五、六人いた奥女中達も皆呼ばれて、話の中へはいることになっていた。話手は多くの場合私一人で、その頃夢中になって読んでいた世界御伽話などの話をした。時には花咲爺の話を得意になってしたことも覚えている。