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あかくら

中谷宇吉郎集 第一巻

中谷 宇吉郎

線上閱讀中谷 宇吉郎《中谷宇吉郎集 第一巻(あかくら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 107,056 字 · 223 頁

青空文庫

そのような尋常二、三年位の私の話を、御前様は真面目に面白がって聞いておられた。あるいは六十を過ぎるまで、その頃の私位の子供の心を持しておられたのかも知れない。四年の冬だったと思うが、私はMの家にあった『通俗三国誌』に凝り出した。ずっと以前に博文館から出した漢文直訳の随分むずかしい本だったが、学校へはいる前から、無理に支那風の書を教えられるような雰囲気に育った関係上、振仮名をたよりにどうにか読んで行った。これでほとんど無尽蔵の話の種を供給されて私は毎晩のように孔明の話をしに御殿へ上った。赤壁の所で、「孔明七星殿に風を祈る」という挿絵がよほど気に入ったものとみえて、わざわざ本を持って御前様の所へ見せに行ったことも覚えている。

その後引続いて、同じ叢書の『西遊記』を読んで随分面白かった。この頃新しい作家達の書き直した『西遊記』を覗いて見てもどこにも昔の姿は見られなかった。自分の年齢の差は除くとしても、本格のもののみが持つ特殊の趣きは到底再現することが出来ないものと思われる。それは別に小説に限ったことではないのであろう。昼は本当の自然の探求者として実験を進め、夜はひき籠って古典的な名著を読むというような本格の生活をしてみたいと思うこともある。