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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

そうそう、彼奴の江戸下りも近づいたから、帳尻を合せておかぬと、何を吼え出すかわからん」

「この夏の二千両の内、八百両、貴殿にお渡しした。あの明細が、未だ、届いていん」

「届かぬ筈で、ありゃ、内二百両が、芸妓に化けた」

「又、出来たか」

「出来たと思うたら、逃げられた」

将曹は、脣を尖らした。そして

「その代り、端唄を一つ覚えた。二百両の端唄じゃ。一、二百両也、端唄、と書け。調所のかんかん爺には、判るまい」

あはははは、と、高笑いして、鈴の紐を引いた。遠くで、微かに、鈴が鳴ると、すぐ、女の声で

「召しましたか」

「酒じゃ」

「はい」

「お高の三味線で、その二百両の唄を一つ聞かしてやろう」

平は、丁寧に、頭を下げて

「有難い仕合せ」

と、膝の上で、両肱を張った。衣擦れの音がして、襖が開くと

「お久し振り」

将曹の愛妾、お高が、真紅の襟裏を、濃化粧の胸の上に裏返して、支那渡りの黒繻子、甚三紅の総絞りの着物の、裾を引いて入って来た。

「高、二百両の端唄を、今夜は、披露しようと思うが――」

お高は、練沈香の匂を立てて、坐りつつ

「三文の、乞食唄?」

「又――」

「でも、深川あたりの流し乞食の――」