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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

「庄吉は、色男だからのう、危い」

と、云って、すぐ、階段を、軋らせて登ってしまった。

「お由羅さん、か」

富士春は呟いた。同じ、師匠のところへ、通って居たこともあったが、物憶えの悪い、お由羅であった。そして、富士春は、その反対であったが、反対であったがために、富士春は師匠となり、お由羅は、いつの間にか、お部屋様になった。富士春は、勝手の小女に

「早く、おしよ」

と、夕食を促した。

益満は、暮れてしまった大屋根へ、出た。周囲の長屋の人々は、悉く、里戻りのお由羅を見るため、家を空にして出ているらしく、何んの物音もしなかった。

屋根から往来を見下ろすと、町を警固の若い衆が、群集を、軒下へ押しつけ、通行人を、せき立てて、手を振ったり、叫んだり、走ったりしていた。

提灯を片手に、腰に手鉤を、或る人は棒をもって、後から出る手当の祝儀を、何う使おうかと、微笑したり、長屋の小娘に

「お前も、あやかるんだぞ」

と、云ったり、その間々に

「出ちゃあいけねえ」

とか

「早く通れっ」

とか、怒鳴ったり――小藤次の家は、幕を引き廻して、板の間に、金屏風を、軒下の左右には、家の者、町内の顔利きが、提灯を股にして、ずらりと、居流れていた。