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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
「お待ちどおで」
七瀬は、小屋の横から、駕へ入る人を、一人一人眺めていたが
(あれは――家中の夫と近しい方――)
と、思うと、一足出て見た。駕は、すぐ上った。七瀬は
(夫のことを聞こうか、聞くまいか)
と、思案した時、その人も、七瀬を見つけた。それをきっかけに、七瀬は、御叩頭をして、小走りに駕へよって
「奈良崎様では?」
奈良崎は、七瀬を見て
「仙波氏は?」
「さあ――ここで、待っておりますが」
奈良崎は
「待つ? 待っておる? 何を愚図愚図と――危険が迫っておるに」
と、いって、すぐ
「駕やれ」
駕は、五梃つづいて、威勢よく行きかけた。奈良崎の急ぐ態度、言葉からは、何かしら、大事が起るような、予感がした。
一筋道ではあったが、八郎太と、小太郎とが、昼間しか通らぬと決まってはいなかった。自分達が、品川から夜道したように、二人は、綱手の眠っている間に、行きすぎたかも知れぬし――
(もしかしたなら、あの人々が、夫を追うのでは?)
と、思うと、そうも、思えた。七瀬は、多勢の者に取巻かれて戦っている、夫と、子とを想像すると、もう、立場で見張っては居れなくなってきた。
(奈良崎の、あの、危険が迫っているという言葉――夫に迫っているのか、自分に迫っているのか? 何故、危険が迫るのか?)