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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

七瀬が

「お尋ね申します」

と、一人へ声をかけて

「只今のお話、もしか、斬られた人の名を御存じでは――ござりませぬか」

旅人は、立止まって、二人を眺めていると、駕屋が

「斬られた人の名前を、知ってなさる人は居ねえかの」

「のう、名は判らんのう」

「名は判んねえが、齢頃は、三十七八だったかの、あの首を取られた人は」

「三十七八? 何をこきゃあがる。二十七八だい」

「こいつ、嘘を吐け。昔っから、生顔と、死顔とは、変るものと云ってあらあ。二十七八と見えても――」

「物を知らねえ野郎だの、こん畜生あ。二十七八だが、死ぬと、人間の首ってものは、十ぐらい齢をとるんだ。女が死ぬと美人に化け、男が溺死すると、土左衛門と、相場がきまってらあ」

「手前、首だけしか見ねえんだろう。俺、最初から見ていたんだ」

七瀬が

「その中に老人が――」

「老人も、若いのも、いろいろいたがね。奥様。まず、こう、その駕、待あて、と」

「おうおう、芝居がかりかい」

「待てと、お止めなされしは?」

「音羽屋っ」

「東西東西、静かにしてくれ、ここが正念場だ」

旅人は、七瀬が、綱手が、何う考えているかも察しないで、綱手を、じろじろ見ながら、巫山戯ていた。