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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

「待て」

と、声をかけた時、小太郎は、その侍の顔を見、次々の駕から出て来る侍を見て、急いで茶店の中へ入って、腰かけた。そして、二人は、街道を背にして、低い声で

「四ツ本の下の奴でないか」

「はい」

二人は、五人の侍に見つからぬように、顔を隠して

「急ぐ模様だが――」

と、云った時、一人の侍が、川の方を見て

「居る、あの二人が――相違ない」

と、四人の者に、川を指さして振向いた。

「人足、急ぐぞっ」

一人は、刀を押えて、磧の方へ小走りに歩み出した。

「今渉るところだ」

「川の中で追っつけよう」

人々は、群集の中で、声高に、こう叫んだ。旅人達は、五人が、前の二人の連衆だと思っていたが、仙波父子は

「討手だ」

と、信じた。

「小太、油断がならぬ」

八郎太は、手早く編笠をきた。

池上と、兵頭との輦台は、川の中央まで出ていた。二人とも、刀を輦台へ凭せかけて、腕組をしていた。

川人足は、行きちがう朋輩に声をかけながら、臍の辺に、冷たい秋の川水の小波を、白く立てつつ、静かに、平に、歩いていた。

人足の肩に跨がり、頭に縋りついている旅人達は、着物の水へ届きそうになるのを気づかいつつ、子供の時、父の肩車に乗って以来、何十年目かの肩車に、不安を感じていた。