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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
天童は、手早く、太腿を縛った。そして、小太郎の立っているところを見ると、小太郎は、もう其処にはいなかった。
「ああ」
断末魔の叫びが聞えた。天童が、その方へ眼をやると、小半町も逃げのびた浪人の一人が、崖のところへ、小太郎に追いつめられて、右手で刀を突き出したまま、左手で、顔を覆って、斬られるがままに斬られていた。
「卑怯者」
と、いう小太郎の微かな叫び声が、聞えてきた。
「ああっ――あーっ」
首をちぢめて、手を顔へ当てて、崖に凭れたまま無抵抗になっている前で、小太郎は大上段に、振りかぶっていた。
「小太っ」
と、八郎太が叫んだ。その瞬間、血煙が立って、突き出ていた刀が、地上へ落ちた。浪人は、岩角から崩れるように、背を擦りながら潰えてしまった。小太郎は、血刀を下げてこっちへ戻りかけた。
「ううっ――うむーん」
味方の一人の唸き声が天童の後方に聞えていた。熊笹の中で――すぐ、後方で聞えていた。天童が、その方へ振向くと、八郎太の脚が、すぐ眼の前のところにあった。天童は、右に置いてあった刀を取上げて、少し、身体を斜めにした。そして、構えると、その瞬間
「父上っ」
小太郎が、絶叫して、走り出して来た。