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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
八郎太は、耳許で、その叫びを聞くと、頷いた。そして
「御身は?」
と、微かに、いった。もう、ぐったりと、牧へ凭れかかって、最後の生命がつきようとしていた。
「牧」
八郎太が、よろめいた。そして
「御身が、牧――仲太郎か」
と、呟いた。もう、牧が何者であるか、判断がつかないようであった。眼を開いて牧を見ようとしたが、瞳がだんだん開いて、力が無くなってきていた。だが
「牧」
と、呟くと、眼が、光を帯びて
「おのれ」
顫える手で、刀を探すらしく手を延した。牧が、仙波の耳へ口をつけて
「仙波、小太郎は、無事に逃れたぞ。見てみい。見事に働いた。仙波っ――小太郎は、無事だぞ。逃れたぞ。小太郎は無事に逃げたぞ」
八郎太は、もう、耳が聞えぬらしかった。微かに
「小太郎――な、七瀬――娘、娘は?」
と、いった。牧は、ぐったりとしてしまった八郎太を、草の上へ静かに置いて
「小太郎は、逃げのびたぞっ」
と、耳許で、絶叫した。八郎太の、血まみれの脣に、微笑が上った。牧は、涙を浮べていた。八郎太の脚が、手が、だらりとなって、眼を閉じると共に、牧は、端坐して合掌した。
秋の日が、傾きかけた。