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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
と、眼で睨みながら、言葉は柔かにいった。
「俺は、俺は、たたたた、物を云っても痛いや、何も、たたたた」
「今夜、遅くに、お居間の廊下へ忍んでござりませ」
小藤次は、くちゃくちゃの顔に、微笑んで
「本当かい」
「ええ」
深雪は、こう云うと共に、眩暈したような気持になった。自分の言葉で、自分を泥の中へ、蹂躙ったように感じた。涙が出てきた。自分の身体も、心も無くなって、ただ、悲しさだけのような気がした。
(操を捨てなくてはならぬかもしれぬ。その代り、調伏の証拠を握って――)
「こ、今夜、子の刻前に――」
小藤次は、よろめいて立上りながら
「広縁で」
深雪は、頷いた。
「たたた、痛えよ、深雪、えらいことを知ってるのう。ああ痛え」
小藤次は、少し笑った顔を見せたが、未だ脇腹を押えていた。
「忍ぶ、恋路の、か――さて、果敢なさよ、とくらあ」
小藤次は、口の中で、唄いながら、植込みの中から、広縁の方へ、足音を忍ばせて、入り込んで来た。
真暗、くらくら
くろ装束で
忍び込んだる恋の闇
と、手を延して、広縁の板へ触れたとき、背後から
「何用でござる」
小藤次は、冷たいもので、身体中を逆撫でされたように感じた。