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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

「見たいか」

と、聞くと、はっきり、強く

「お父は?」

と、いって、頷いた。英姫は、すぐ、侍女に斉彬を迎えにやったが、今行く、今行くと、とうとう斉彬の来ぬうちに、また熱の中へ倒れてしまったのであった。

(何んなに、顔を見たかっただろうか)

寛之助が、灰色の、広々とした中を、ただ一人で、とぼとぼと、果もなく、父を恋い、母を求めて歩いて行く姿が考え出されて来た。英姫は、袖を噛んで泣き入った。

「寛之助――父じゃ」

と、斉彬が叫んだ。だが、幼児の眼は、もう動きもしなかった。

「方庵」

「はっ」

「澄も、邦も、同じ容体で、死んだのう」

「はい」

「未だ匙が届かぬか」

やさしいが、鋭い言葉であった。斉彬のいうのは、当然であったが、方庵には、どうしても解せぬ病であった。

「七瀬、疲れたであろう」

「いいえ」

「病は、薬よりも、看護じゃ。こういう幼児には、余計にそうじゃで――」

七瀬は、斉彬の称めてくれる言葉を、責められているように聞いた。寛之助の死は、斉彬にとって、後嗣を失う大事であると共に、七瀬にとっても、仙波の家を去らなければならぬ大事であった。夫の肩身を狭くし、自分を不幸にさせ――と、思った時