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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

そして、刀を抜いて、鞘を夜具の上へ置いた。そして、耳を澄ましていたが――すぐ片膝を立てて、右手に、脇差を構えた。風が、時々、薄ら寒く入って来た。

庄吉の手に、冷たい、すべすべしたものが、触れた。指で探ると、蒔絵をしてあるらしく、撫でて行くと、一尺四方程の――それは、確かに、手函にちがいなかった。

(しめたっ)

庄吉は、両手を蓋へかけて、引上げたが、細工のいい函の蓋は、すぐには、持ち上らなかった。

(函ぐるみ)

と、思ったが、目的は、書類であった。この函の中に無かったら、又、別のところを探さなくてはならぬから、左手で、下の方を押えて、右手で、蓋を開けようとした。だが、小太郎に折られて、十分に癒りきっていない手であった。蓋は、一旦浮いたが、手がすべった。ことり、と音がした。

「誰じゃ」

調所は、静かに、咎めた。そして、波の平の脇差をとって、蒲団の上で、居所を、少し変えた。声を手頼りに斬りかかられても、空を斬らす、心得からであった。そして、脇差を抜いて、じっと、闇の中で、床の間の方の気配をうかがっていた。

低い、静かな声であったが、庄吉は、見えぬ手で、一掴みにされたように感じた。