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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

血の跡があろう。宿の者を起して、街道、抜道へ、すぐ手配りするよう」

供の人々は、一時に、廊下へ出た。調所は、寝床の上に立ったまま、血の真黒に淀んでいる床の間を、睨みつけていた。

(あの中の書類には、密貿易の証拠となるべき物がある。もし、人の手に渡ったとして、その人に依っては、自分の破滅だけではない、島津の破滅の因になるかもしれぬ。鼠賊だと、侮ったのが不覚であった。相当心得のある忍び者であろうか?――それにしても、確かに、斬り落した片腕の無いのは?)

宿の中が、急に騒がしくなって、番頭が、足音忙がしく入って来た。

「まことに、相済みませぬことで――入ったような形跡はござりませぬが――」

「宵に、酔って踊って来た奴があったのう、あの部屋を調べてみい」

「かしこまりました。裏道、抜道へは、よく知った者を出しましたし、御役所へも走らせましたから――」

調所は、黙って、床の間へ歩いて行った。手函の空なのが、血の上にあった。覗き込むと、その中にも、血がたまっていた。

(破滅か)

調所は、静かに蹲んで、眼を閉じた。

(俺は、もう、いい齢だ。いつ死んでもいい。功も成し遂げた。