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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

自分の手から放すと、自分を怨んで泣くように感じた。

(しっかり、そいつを握って、暫く、待っていろ。俺あ、血を止めねえと、命にかかわっちまうからの)

と、頭の中で、腕にいい聞かせて、自分の股のところへ立てかけた。そして、手拭、頬冠りの黒い布、襦袢の袖、腹巻の布と、ありったけの布で、二の腕の上を縛り、傷口を巻いた。

頭が少しふらつくようで、額が冷たく、呼吸が、いくらか早くなっていた。

(いけねえ、このまゝ死ぬんじゃあねえかしら?)

腕から、肩へかけて、灼け、燃えるようで、身体の底まで、疼痛が突き刺した。人々の叫び声と、走る音と、提灯とが、すぐ前で、飛びちがった。

(何うにでもなれ)

炭俵に、身体を凭せかけて、足許へ置いておいた腕を懐へ入れた。腕はもう冷たくなって、切口からは骨が尖り出ていた。

庄吉は、自分の命が、この腕の中に籠っているように感じた。この腕に、書類を握らせておいたら、自分が持っているよりも安心だし――

(ひょっとしたら、この腕に、足が生えて、深雪のところへ、この書類を届けてくれるかもしれんぞ)

と、いう気さえした。斬り落されて、もう、生命の無い小腕だとは、十分に分っていたが、庄吉には、何うしても、生きていて、奇蹟を現すもののように思えた。