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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
小太郎は、水を飲み終ると、そのまま、草の中へ、顔を伏せて、身動きもしなかった。父の声のようなものが、耳の中でなく、外からでもなく、頭の中にでもなく、聞えているような、聞えないような――
(小太郎、右へ――)
この耳で聞いたのだろうか?――父が、生きているような、殺されたような――殺されたにちがいないが、起き上って来たあの血染の姿――死んでいないのではないだろうか?――そう思うと、その辺に、父がいそうな気がして、顔を上げた。そして、見廻した。
空には、冬の星が、冷たく、高くまたたいていた。
(動けない)
小太郎は、自分の脚が、二本の重い、鉄棒のように感じた。自分の手は、こわれ易い土製のように思えた。
(明日の朝になれば、見つかって、殺されるであろう――それでもいい)
小太郎は、又、水を飲んだ。水が、水の味をしていたし、冷たかった。手が、血で固くなっているのも判った。
小太郎は、人の頭を、子供がいじるように、自分の頭の疵を掌でたたいて、指でいじってみた。疵口は、血でかたまっていた。
(そう深くはない)
と、感じた。それから、手を這わせて、灼けつくように感じる身体の疵所へ、指を当てた。