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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

そして、それを執拗に、大仰らしく調べている綱手へも腹が立ってきた。

「まあ、お枕の方へ――」

「狸でも入ったのであろう。よいではないか」

「狸が」

「山のことじゃ」

「まあ、気味の悪い、妾――」

綱手は、月丸の枕近くへ寄って来た。

「武士の娘が、狸ぐらいを――」

月丸は、綱手を叱ったが、綱手の廊下へ出るのを見に自分が立ったなら、障子の外に義観がいるような気がした。

「でも――」

綱手は、媚びるように、甘い口調であった。

「そこまで見てやろう――子供でもあるまいに――」

月丸が立上ると、すぐ綱手に触れた。二人の手は、互に探しあった。

「まあ、冷たいお手々」

綱手は、自分の両手の中へ、月丸の右手を挟んで押えた。

「連衆は、何うした」

と、義観が聞いた。

「用事がござりまして、大阪へ戻りましてござります」

綱手は、誰に逢うのも恥かしかった。誰でも、百城と自分との仲を知っているように思えた。顔か、身体か、眼か――何っかに、変ったところができているように思えた。

「昨夜は、何んともなかったかな」

義観のこういった言葉は、やさしく、低かったが、綱手には、月丸と二人のことを知っている言葉のように思えて、真赤になった。