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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
この齢をして、三年、五年生き延びんがために、なまじ、悪あがきは致したくござりませぬ」
「うむ」
と、斉興は、大きくうめいた。
「御茶坊主から取立てられまして三千石近い大身となり、家老格にも列しました上は、仕事は、まず、十中八九までは成就、最早思い残すこともござりませぬ。それに、竹刀持つすべだにも存ぜぬ手前、腹の切りようは、勿論、存じませぬが、従容死に赴いて、死に対する心得のあったことだけは、老後の思い出、若い者に、示しておきたいと存じまする。ともすれば、坊主上りと、世上の口にかかりますが、その坊主上りの死ざまを見せて、冥途の土産にと、平常から――」
と、いって、調所は、手を懐へ入れた。そして、紙入を出して、その中から、小さい錫の容物を取出した。
「毒薬でござりまする」
斉興は、黙っていた。
「伊勢の手にて取調べるにしても、まだ、十日、二十日は命がござりましょう。その間に、御奉公の納め仕舞、もう一儲けしておいて、さようならを致す所存、先刻申し上げました処置方のいろいろに就きまして、掛の者共を、御呼び集め下されますよう。夜長ゆえ、あらましは、二三日にても取片付けられましょう」