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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

よいかな、もし、ここで、わしの申すことを聞かぬと、わしも、留守居として、殿へ申訳がないから、その方は、母親へ送り届けて、母親諸共、暫く、窮命じゃ。又、百城とて、片手落の捌きはできぬから、仲太郎の許へ戻して、処置をつけてもらわにゃならぬ。何うじゃな、牧」

「はっ」

「女は?」

「よく、判りましてござりまする」

「それでは、別れると、此後一切係り合い無しと、これで、誓紙を作るがよい。早く、承諾してくれて、落ちついた」

兵太夫は、違い棚から、手文庫を下ろして来て、中から、紙を取出した。

「恐れながら――」

「何かの」

「暫時、両人にて、話しとうござりまするが、次の間を――」

「ははあ――それは、よいが、別れる決心は、したのであろうの」

「はっ」

「なら、少しは――よかろう。許す」

二人は、平伏してから立上った。兵太夫は、紙を延して、膝脇へ置いた。そして、自分で、茶をついで、飲もうとしながら、じっと、二人の入った次の間を見た。そして、厳格な、留守居役の顔になって、暫く、耳を立てていた。

憤死事件

牧仲太郎は、寝不足の眼を血走らせて、誰も入れない一間で、魔天の像を描いていた。

白い絹の上に描かれて行く魔天の線は、所々薄ぐろく、所々は紅であった。