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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

月丸は、刀尖を、地に下ろすと、すぐ、右肩の上へ、真直ぐに刀を立てた。同じ、示現流から、東郷、薬丸の二派に分かれた内の、薬丸流唯一の構えであった。

「いざ」

小太郎は、正眼につけて、一足退った。かと、思う瞬間、一足出た。薬丸流に対して、余り、距離をあけることは、不利であったからであった。

だが、その刹那だった。月丸も一足退ると、正眼に構え直した。小太郎は

(はて)

と、思った。そして、すぐ、正眼から、頭上へ、真直ぐに、大上段に、突き立てるであろうと思っていたが、月丸は、そのまま、じりっと、刻んできた。薬丸流ではなかった。小太郎は

(偽ったな)

と、思った。そして、そう思うと同時に

(負けるものか)

と、決心した。その途端だ。月丸は

「出るなっ、出るなっ」

と、何かへ、叫んだ。

「加勢か」

「いいや」

月丸は、いいや、と云ったが、小太郎には加勢だと思えた。自分が、叡山での斬込みの腕を知っている以上、一人で来た、と云っても、危くなれば、加勢に出て来る者くらいあるのは、当然だと思った。しかし、そうは思いながらも、月丸が、それに対して、立派に

「一人だ」

と、いい切ったことに、憤りを感じて来た。