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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

「契りました――知らずに――ゆ、許して」

小太郎は頷いた。

「手を――握って」

動かない左手の手の指を動かしながら、右手を、小太郎の膝へかけた。小太郎は、その手を、握りしめた。

「死にます――不孝を――許して」

だんだん、言葉が、もつれて、微かになってきた。

「許す――こ、心残りなく行けっ」

綱手は、頷いて

「お顔を――」

小太郎は、顔を差しつけた。

「もっと――明るく――暗うて――暗うて」

「もう、眼が見えんか」

「いいえ、暗うて――」

そういって綱手は、もう、半分、眼を上ずらせていた。

「兄様、知らずに――契って――」

「よ、よく、判ったぞっ。許すぞ、綱手、許すぞ」

「もう――一度――顔を――顔を――兄様――深雪、母上に、もう一度――」

「綱手っ――百城殿の膝の上じゃぞ、判るかっ」

百城は、顔を上げた。そして

「綱手、月丸じゃ」

「ああ、月丸様――うれしい――もっと、抱きしめて――身体が、下へ――下へ、落ちて行きます」

綱手の呼吸は、微かになって、眼が閉じてしまった。小太郎は、胸へ手を入れ、額へ手を当ててみてから、静かに

「心残りなく成仏せい。許すぞ」

と、いうと、涙を落した。