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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

のう、お春」

「ええ?」

富士春は、朗らかな益満の声に、笑顔と、媚とを見せた。

女師匠の浮気さは

水に落した月の影

「まあ――それから」

掬めば、止まらず

掬まなけりゃ

つんと、すました、仇姿

と、云って、益満は、扇で、富士春の肩を軽く叩いた。

「ま、いやな――」

富士春は、大仰に、そして、媚めかしく、身体を躱けて

「撲ったりしてさ」

と、睨んだ時

ええ、じれったい

益満は、手早く、編笠の上から、又一つ叩いた。

「あれ、又一つ――」

と、云って

益満は、大きい声で、節をつけた。そして、すまして、歩きながら

飛び込みゃ

からんで、命とり

「憎い人だねえ」

と、富士春が、うしろから、小走りに、声をかけると、通っていた若い衆が

「えへんっ、えへんっ、だ」

と、富士春と、すれちがいざま、怒鳴って行った。

寄席の裏木戸から

「御免よ」

と、声をかけた。誰もいなかった。汚い入口の右手に、下駄箱があって、正面に、色の褪せた暖簾が、かかっていた。その奥が、楽屋から、すぐ高座らしく、裏木戸を入って、戸口に立つと、南玉の演じている声が、聞えていた。

「去る程に」

とんと、扇が入った。

「一夜明くれば、御正月――には、これあらで、いつなんめり、延元の元年、五月は二十と五日の日。