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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
何か、母が、証拠でも握ってくれたのであろう。それならば、それを手柄にして、円満に行けば――と、母の顔を見た。
「どういう?」
「一昨日の夜のことでございます。夢でもなく、うつつでもなく、凄い幻を見ましたが、これが、若君を脅かすらしく、幻が出ますと、急に――」
八郎太の眼が、険しく、七瀬へ光った。
「たわけっ」
八郎太は、睨みつけた。
「何を申す、世迷言を――」
その声の下から
「御尤もでござります。お叱りは承知致しております。人様にも、誰にもいえぬ、奇怪な事がござりますゆえ、未だ、一言も申しませぬが、貴下へ、せめて――」
「たわけたことを申すなっ」
八郎太は、七瀬が夢のような事をいい出したので、怒りに顫えてきた。常は、こんなではないのに、余り大事の役目で、少しどうかしたのではないか、と思った。
「然し、父上――母様、もう少し詳しく、腑に落ちるようにお話しなされては」
と、小太郎が取りなした。
「黙れ、そちの知ったことではない」
「然し」
「黙らぬか」
「はい」
小太郎は立上った。益満を呼ぶより外にないと思った。そして、玄関の次の間に行って、妹の深雪に
「すぐ益満を呼んで――母が戻って来たからと」