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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

内玄関へ出ると、万作が

「何事でござりますかな」

と、草履を履きながら、七瀬を見上げた。

「さあ」

と、いったが、七瀬は、逆上せてくるくらいに、何かしら、腹が立ってきた。神にも、仏にも、思いっきり、その無情をなじりたいような気持であった。万作は、すぐ、走って行った。七瀬は、自分の草履を、叩きつけるように、土間へ、投げ下ろした。

(お国許で、こんな騒ぎが、起っている以上、大阪にも、何か、起っているにちがいない――綱手は、何うしているかしら)

七瀬は、往来の人々が、怪しんで、振向くくらいに、急ぎ足で、歩きながら

(調所様は、よい方であったが、今度の蔵屋敷の方は、何んな人かしら――)

敵党の人だとは知っていたが、調所には、好意がもてた。向うから、馬蹄の音が、聞えて来たので、軒下の方へ、避けながら、馬上の人を眺めると

(見たことのある――)

と、感じた。そして、じっと、凝視めていると、顔が、明瞭としてきた。

(ああっ、四ツ本喜十郎)

七瀬は、一寸、立止まって、馬上の四ツ本を睨みつけた。そして、四ツ本の、すぐ、後方から、同じような栗毛の馬に乗って来る男の顔を見ると

(おお百城様)