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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
「今、川北に逢って参ったが、話の外の沙汰じゃ。そりゃ、評定所で、争うのも――」
「争うのではない。申し聞かしてやるのじゃ」
「それでもよいが、四ツ本一人を対手にするようなものじゃ。川北も、川上も、この伝達を拒んだがため、評定所へは出ん。獣を対手に、しゃべり立てて見たところで、始まらんではないか、近藤」
「四ツ本一人?」
近藤は、睨みつけるように、本田を見た。
「彼奴を、人間と思うか? 申し残すことがあれば、ここに集まっておる者に申せ」
「そうじゃ」
と、郷田も、頷いた。
「倅までが、遠島か」
高崎五郎右衛門は、左手で、火箸を握って、灰の中へ突き立てながら、女房を見て、静かに云った。幼い左太郎(後の、高崎正風)は、父母や、自分の運命も知らないで、いつものように、あやしてくれぬ二人へ、笑顔を向けたり、手を出したり、足をもがいたりして、催促していた。
「井上出雲守様が――」
と、廊下から、つつましく、取次が云った。
「お通し申せ」
そう云って、涙に濡れている妻の眼を見ると、妻は急いで、眼を拭って
「この子は、何う致しましたら」
夫の眼へ哀憐を乞うように
「田舎へでも――」