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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
だが、まだ眠っている時刻ではなかった。
「師匠」
益満が、戸を叩いた途端、増上寺の鐘が鳴り出した。
「誰方?」
「ま、だ」
「ま?」
「まの字に、ぬの字に、けの字だ」
益満は、大きい声を出すと
「やな、益さん」
小女が、戸を開けて
「お楽しみ」
と、からかった。
「師匠の方は?」
襖の内に、二三人、未だ宵の男が残っていた。
「首尾は如何?」
一人が、声をかけた。半分開いた襖の中に、酒が、肴が並んでいた。
「お帰んなさい。丁度よいところ」
富士春が、顔を少し赤くして、裾を崩していた。益満は、暗い次の間に立っていた。
「へへへ、だんだんよくなるところで、ええ、お出でなさいまし」
一人は酔っ払って、両手をついた。
「刀は?」
「刀?――刀なんぞ野暮でげしょう。野暮な邸の大小捨ててさ――中でも、薩摩の芋侍は野暮のかたまりで、こいつにかかっちゃ、流石の師匠も? 歯が立たねえって――へへへ、御免なせえ」
益満が、富士春の持って来た刀を取ろうとすると、女は、手の上へ手をかけて
「ゆっくりしたら」
と、媚びた眼で見上げた。
「そうは勤まらぬ」
富士春は、益満の手を、力任せにつねった。
小太郎は、嬉しさで、いっぱいだった。