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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
月丸は、兵道家の子として、兵道を学びはしなかったが、その少しを、知ってはいた。仙波八郎太のために、叡山の上の、修法場を荒された牧仲太郎は、いつか又、叡山で、修法を――それは、最初の行よりも、三倍の行をしなければならなかった。
(父は、叡山へ来るかも知れぬ――自分が、京へ入ると共に、急に、あの山へ行ってみたくなったのは、何かしら、父の霊と、自分の霊とが、ふれているのでは、ないであろうか)
そういう風にも、思えてきた。
(そんなことは、あるまい――父は、よく、人の霊魂の、不思議を説くが、自分は、七瀬の夢さえ見たことがない――魂の不思議――そんなことがあるであろうか?)
月丸は、父の修法の効験のことを考えると、十分に、あるとも思えたが、自分が、二人の女を殺したのに、何んの不思議も、起って来ないのを考えると、無いようにも思えた。だが、こうして、叡山のことを、考えていると、何かしら、自分が、叡山へ行ったなら、不思議な事が、起るような気もした。そして、そのことが、不安なようであり、怯けるようであり――行ってみたいが、何んとなく、恐ろしいようにも、感じられた。
(何を、怯ける?――行こう――きっと、行く)