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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
振向くと、深雪であった。そして、それと、同時に、月丸が、深雪の方を、ちらっと、見て、佇むと、じっと、深雪を、凝視めた。そして、そのまま、三人の方へ、歩き出して来た。
「庄吉、大変だ」
と、南玉が、叫んだ。
「月丸だ」
庄吉は、呟くと、二人の前へ出て、月丸の来る方へ、歩き出して
「お訊ね申しやす」
と、叫んで、頭を下げた。南玉が
「お嬢さん」
と、云って、逃げろ、と、合図した。
「いいえ」
月丸は、庄吉に、答えもしないで、どんどん、近づいて来た。
「お訊ね申します。貴下様は、もしかしたなら、百城月丸様では?」
月丸が、じろっと、庄吉へ、眼をくれたまま、近づいて、深雪に
「綱手殿の、お妹御ではないか」
と、云った。
「はい」
そう、はっきりと、答えはしたが、深雪の顔色は、蒼白で、手も、膝も、顫えていた。庄吉は、懐の短刀の鯉口を切った。
「よう似ているで、もしかと、存じたら、矢張り」
月丸は、頷いた。深雪は
(何を、泣いて?)
と、月丸の、薄紅の眼瞼を見た。そして
(話のようにいい男だが、この顔ゆえに、姉様が――)
と、思うと、蒼白い怒りが、心の底から、顫え上ってきて、肌の上へまで、しみ透ってきた。